マーケティング戦略の立案手順

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マーケティング

はじめに
マーケティングの知識や基本情報を提供する本はあふれるように存在する。そのような理論的な本についてはあくまでガイドラインを提供するものであり、具体的に実践ではそれをどのようにしたら実行されるかを、詳しく記載しているものは少なく感じる。
 自身は、マーケティングを読んで継続的に勉強しているが、実践形式の内容の書籍でないと、理論的な情報が書いてある本ばかりでは、実際にマーケティング戦略立案や、課題整理の実務を行うことは難しく感じる。
 今回は、一部マーケティングの理論もあるが、実際にどのような手順でマーケティング戦略の立案と、課題の整理を行っていけば良いかを、具体的に記載してみるので、マーケティング活動の参考にしていただければと思う。

マーケティング戦略とは
 マーケティングとは、顧客を理解し、製品とサービスを合わせて顧客との関係性を構築して、商品が売れるプロセスを構築することであり、マーケティング戦略は、当該プロセスの準備・計画のすべてと言うことができる。
 商品やサービスがあふれている時代では、商品やサービスそのものの価値だけでは、消費者に目にとめてもらい、選択してもらうことは困難です。多様な情報にアクセスできる社会では、消費者の興・関心は、細分化し、そして購買行動はより細分化で複雑なものとなっています。そうした消費者のニーズに合わせて、商品やサービスの販売方法を変えて行かなければなりません。
どのようにすれば消費者に商品やサービスを販売できるかと言った明確な準備や計画のマーケティング戦略が、とても重要です。

マーケティング戦略立案の作業フロー
 マーケティング戦略立案のプロセスの体系図を下記に記載している。マーケティングの全体像見ながら、どのように戦略が立案されるのかを把握することは、マーケティングの理解を早めることが出来る。また、この立案プロセスに沿いながら、あなたが直面しているマーケティング課題を整理して頂ければ、あなたにあった有効なマーケティング戦略の企画書が作成できるかと思います。

 初めにお伝えしておきたいのは、有効性の高いマーケティング戦略は、「適切なマーケティング課題を設定して、対策が立てられた戦略」ということです。そもそも適切な課題を設定できていない場合、その不適切な課題に対して対策を行っても何ら意味を持たない結果となります。他方で、適切な課題さえ設定できていれば、それの対応策が良いか悪いかはあるが、売上の向上等のマーケティングの目的へ近づくことが出来ます。
 ゆえに、適切な課題の設定までが特に最重要な事項となります。

■マーケティング戦略立案の作業フローの全体像

企業戦略(マーケティング目標)
マーケティング戦略の立案での一番初めのステップです。企業目標の確認作業はとても重要で、目標によって戦略の立て方が大きく変わってきます。例えば、「3年以内に業界売上シェアを1番にする」というのと「10年以内に業界売上シェアを3番目に到達する」の企業目標の比較では、前者では後者よりも経営資源(お金や人等)を集中して投下することが求められます。そのため、マーケティングにかかる費用も、前者の方が後者よりも圧倒的に多くなります。このように、企業目標によって戦略の立て方は大きく変わってくるため、企業目標を、戦略を立てる前に確認することがとても重要になってきます。

市場環境分析
市場環境分析では具体的に、社会分析、市場分析、競合他社分析、消費者分析、商品・サービス分析、流通分析等を言います。このような分析を実施することで、自社やサービス、ブランド等についてどの点に問題があるのか、又はどの点にチャンスがあるのかを抽出していきます。マーケティング課題の設定するにあたっての問題点を抽出する作業であるため、重要な役割になっています。
 市場環境分析を行う上での重要ポイントとしては、「だから何??」とならないようにすることです。自社への影響を必ず考えて、分析だけでは終わらせないことが、当然のことですがとても重要です。

社会分析とは、生活者の暮らしに影響している世の中の動向や変化を分析することです。人口、経済、社会インフラ、時代の価値観、文化などを分析します。
市場分析とは、ビジネスを展開する市場の特徴を分析することです。 市場規模、市場成長率、市場シェアなどを分析します。
競合他社分析とは、自社と比較しながら競合企業の特徴や戦略を分析することです。質的側面の分析では、サービスの特徴、顧客層や、組織、文化などを分析します。量的側面の分析では、売上高や、利益、市場シェア、店舗数、従業員数などを分析します。
消費者分析とは、消費者の特徴や変化を分析することです。顧客の性別や年齢没、年収、職業などについて分析します。 
商品・サービス分析は、自社商品・サービスを競合と比較し分析することです。商品であれば、重量や、形、デザインなどについて分析します。サービスであれば、アフターフォロー、時間などを分析します。
物流分析とは、販売場所や販売エリア、販売ルートなどを分析することです。 
 商品を扱う企業であれば、商品が消費者に届くまでにどのような販売ルートをたどるのかを分析したり、サービス提供企業であれば、サービスの提供エリアや販売拠点の商業圏を分析します。

課題の設定
 課題とは、目標や目的を克服するために取り組む事項を言います。問題点と混同しがちですが、課題と問題点は異なります。「問題点」は、目標や目的を克服するための障害を意味しますが、「課題」は克服のために何を取り組まないといけないかを意味します。両者を整理して、課題の設定をしていくことが重要です。

 課題の設定には、まず市場環境分析を行います。そして、そこで問題点とチャンスを抽出します。ただし、そこでは問題点とチャンスが多数出てくると思います。それを整理する必要があります。その項目ごとの重要誠意を勘案しながら整理する方法、因果関係を考えながら問題点を構造化して整理する方法等です。
 重要度から課題を設定する方法は、重要でないと判断した問題点を捨てていく方法です。
問題点を複数見ているとどれも重要に見えてきますが、すべてに対応することはほぼ不可能です。また、多数の問題点に集中して対応することもできません。そのため、本当に重要だと考えるものだけを残す消去法をとる必要があります。
 もう一つは、問題点を構造化して整理する方法です。上述した通り、ほとんどの場合複数出てきます。そして、その問題点は総合に関係している場合もあります。その問題点が、原因と結果の関係にあったり、並列の関係であったりします。問題点の関係性を整理して、根本原因を抽出する方法が、問題点を構造化して整理する方法です。構造化して整理した結果、根本原因が、ごく少数になる場合もあり得ますので、それだけに注力すれば良いことになります。

問題点と課題の整理図

マーケティング基本戦略
企業目標、マーケティング目標を確認し、市場環境分析で問題点とチャンスを識別、整理して課題が設定できたら、次にその課題についてどのような市場を狙って、どのような位置づけで、どのように展開していけば良いのかを整理していきます。
マーケティング基本戦略を立案するためには、市場での自社のポジショニングを決定しなければなりません。そして、ポジショニングを決めるには、どのような市場を狙うかをまず決めなければなりません。どのような市場を狙うかは市場を全体でとらえるのではなく、小さな区間で市場をとらえる必要があります。大きな市場を細分化して、売上獲得が高い市場を見つけ出すことをセグメンテーションと言います。
マーケティング基本戦略の流れは、「セグメンテーション」「ターゲティング」「ポジショニング」となります。
「セグメンテーション」のポイントは、消費者目線で市場を分けると言うことです。
消費者のニーズに分けて、区分しなければ、そこにはそもそもニーズが無く、このあとターゲティングやポジショニングを行っても、そこにはニーズが無く、売上の獲得にはつながらないこととなります。
「ターゲティング」のポイントは、性別や年齢等の統計学的属性の側面だけでなく、性格や価値観、ライフスタイル等の心理的属性の側面も考慮するということです。具体的に、ターゲットをイメージできることで、ターゲットに対しどのようにこのあと、対応策を考えていけば良いかが容易になるためです。
「ポジショニング」のポイントは、他企業のポジションから離れたポジション取りをすることです。他社と差別化を図れ、競合せず収益を獲得しやすくなり。ただし、企業の目的やコンセプトが決まっている場合のポジションの変更費用や、そもそも消費者のニーズの分母が少なくなる可能性は考慮しなければなりません。

広報戦略(表現戦略、メディア戦略)
広告戦略は、広告全体の大きな方針を決めることをいいます。表現戦略とメディア戦略から構成され、広告を、何のために、誰に対して、どのようなメディアで、どのような内容で、どのくらいの期間で、どのあたりで、展開していくのかの方針を決定します。広告戦略でのポイントは、戦略の一貫性です。広告戦略のターゲットが男性の中年層に対して、表現戦略のターゲットが男性の20代前半になることはありません。
 表現戦略を立案する際には、マーケティング戦略や広告戦略が立案されています。そのため、この広告で何を伝えればいいかは決められています。したがって、表現戦略を立案する際は、どのように伝えれば、消費者が効果的に反応してくれるかを決めます。表現戦略でのポイントは、今の消費者がどのようなものの考え方、感じ方をしているのかを把握することが大切です。

メディア戦略は、表現戦略で立案した表現内容を、どのような媒体、メディアで消費者に伝達するかの方針を決めることです。ターゲットに刺さる良い表現を作成したとしても、実際にターゲット層が見ないメディアや、媒体に掲載してはほとんどターゲットに届かず、意味のないこととなってしまいます。したがって、どのようなメディアがあり、今の消費者がどのような割合でメディアを利用しているかを把握することが、メディア戦略では重要となります。

販促戦略
販売促進戦略は、広告戦略と比較しマスメディアを利用しない短期的に購入者を誘発する戦略活動とここではします。広告戦略と同様のターゲットに絞って戦略を立案していることです。

PR戦略
PR戦略とは、社会と良好な関係を築き、維持していくための戦略です。具体的には、メディアへの露出や、イベントの会社、キャンペーンサービス等があります。
PR戦略は大きく分けて、マーケティング戦略に基づく戦略と、マーケティング戦略に基づかないものの2種類があります。マーケティング戦略に基づきPR戦略の場合は、マーケティング課題を解決するために、PRがどの部分を担うかを明確にしなければ、混乱するため注意が必要です。また、広告戦略や販売戦略と同様のターゲットにサービスを提供する場合は、サービスの統一性を注意する必要があります。これも、ターゲットの混乱を招くためです。

その他のマーケティング戦略
ここまでマーケティングの全体像を話してきたが、当然のことながら業界によっては戦略の中でより注力するべき戦略もあれば、そこまで注力すべきでない戦略もある。その他の主要なマーケティング戦略を記載してみるので、自社に合わせた戦略の立案を検討して頂ければと思います。

1つ目は、商品戦略です。商品戦略とは、商品ブランドにかかわる開発、生産、販売、在庫、利益管理および品質などの、すべてのプロセスを通じて、商品ブランドの収益の最大化するための準備と計画をいいます。商品戦略を進めるにあたっては、まずブランドマネージャーを任命して商品全体を統括する責任と権限を設定します。続いて、市場環境分析をもとにしたチャンスや自社の資源などをもとにした、商品コンセプトの開発を行います。そして、商品のネーミングを行うことで商品の大枠を決定できます。商品コンセプトなどの大枠をもとに、生産、販売、在庫、利益管理(価格)の詳細設定し、各整合をとり、商品ブランドを完成させます。

2つ目は、価格戦略です。価格戦略とは、自社の利益を最大化するため適切な価格を設定を言います。まず、マーケティング基本戦略で定めた自社のポジショニングを確認し、商品・サービス質の度合い、サービスの独自性などを考慮し、価格戦略の基本的な方針(スキミングプライシング戦略、ペネトレーションプライシング戦略、コストリーダーシップ戦略、高価格戦略、ダイナミックプライシング戦略、キャプティブプライシング戦略、ラグジュアリー価格戦略など)を複数決定します。そして、企業目標との整合性を確認し、価格戦略を決定します。企業目標が「業界内で5年以内に販売数量がシェアNo.1」であれば、高価格帯での販売では企業目標と整合が取れません。

3つ目は、物流戦略です。物流戦略とは、どのようにすれば商品が消費者に届くまでに、円滑に商品が流通するかを考えることを言います。物流の方法には、問屋を通す場合と通さない場合、または1次問屋及び2次問屋を利用する場合など様々な方法があります。物流方法を組み合わせて場合分けを行い、比較検討を行い、最適な物流方法を決定します。
物流戦略の設定の際に注意すべきポイントは、企業戦略との整合性です。流通を多くする戦略であれば、進んで問屋を介して広地域に早く流通させる方が良いですが、ブランドなどの高販売単価の商品の場合は、消費者に高いブランドイメージを持たせるために、限られた流通方法で商品を販売する方が良いこともあります

まとめ
ここまでマーケティング戦略立案の具体的なとその進め方について記載してきました。ただ、一番大切なことは理論で終わらせないことで、実際に立案して実行することだと思っております。これを見て頂いた方々が、少しでもマーケティング戦略の立案をスムーズに行って頂けること、また有効な戦略で及、継続的なビジネスを行っていたけることを祈っております。