アンケート調査企画と調査票

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アンケート調査企画と調査票まとめ

①マーケティングリサーチとは
 マーケティングリサーチとは、マーケティング活動における「情報収集」と「適切分析」のため「市場情報」や「顧客情報」などを集める活動と言える。
例えば、サービスやコンセプトの開発を行うために消費者や顧客の声を集め、企業やその他の団体に伝達することである。
マーケティングリサーチを行えば、マーケティングリサーチを行うことで、客観的な数値の事実を把握することができ、また、消費者の考え方を知ることが出来るため、有効なマーケティング戦略の基礎を作ることが可能となる。

②アンケート調査とその活用例
 アンケート調査とは、特定のテーマや問題について、対象となる人々(回答者)から情報を収集する方法です。調査方法は、質問票を用いて行われ、回答者に対して一連の質問を提供し、その回答を集めることにより、データを得るものをいう。アンケート調査には、下記の手法がある
a. オンラインアンケート
 インターネットを利用して、メールやSNS、専用のアンケートツールを通じて実施する調査です。広範囲にわたる迅速なデータ収集が可能です。
b. 紙ベースのアンケート(留置調査)
 紙の質問票を用いて実施する調査です。対面での配布や郵送による収集が一般的です。
c. 電話アンケート
 電話を通じて回答を収集する調査です。直接の対話により、高い回答率が期待できることがあります。
d. 面接調査
 調査員が直接回答者と対面し、質問に答えてもらう形式の調査です。詳細な回答や深掘りした情報を得やすい利点があります。
e. 郵送アンケート
 質問票を郵送し、回答を返送してもらう形式の調査です。特定の地域やターゲットに対して有効です。

 アンケート調査は、様々なデータ収集手法の中でもよく使われる方法の一つです。アンケート調査は大量のデータを収集できる一方で、回答率の回答の質の低さなどのデメリットが存在する。メリットをデメリットを下記に記載するので、ご参考頂きたい。

■メリット

  1. 様々な形式
    アンケート調査は、紙媒体、オンライン、電話、対面など、様々な形式で実施できます。これにより、目的や対象者に応じて最適な方法を選ぶことができます。
  2. 大量のデータ収集
    一度に多数の回答者からデータを収集できるため、統計的に有意な結果を得やすく、全体の傾向やパターンを把握するのに適しています。
  3. 定量データと定性データ
    定量的な質問(数値や選択肢)を通じて統計分析がしやすいデータを収集する一方で、自由回答欄を設けることで、定性的なデータや詳細な意見も収集可能です。
  4. コストと時間の効率
    大規模な調査を比較的低コストかつ短期間で実施できることが多く、特にオンラインアンケートは手軽に実施できます。
  5. 匿名性
    匿名での回答が可能であり、回答者が正直かつ率直に意見を述べやすい環境を提供します。

■デメリット

  1. 回答率の低さ
    特にオンラインアンケートの場合、回答率が低くなることがよくあります。回答率が低いと、データの信頼性が低下する可能性があります。
  2. 回答の質のばらつき
    回答者が質問を正確に理解しない場合、不適切な回答や誤解を招いた回答が含まれることがあります。また、回答者が真剣に答えない場合もあります
  3. バイアスの可能性
    アンケートの設計や質問の形式によっては、回答にバイアスが生じることがあります。また、回答者の自己選択バイアスも存在します。
  4. 詳細なデータの欠如
    定量的なデータは集めやすいですが、回答の背後にある理由や感情などの定性的なデータを得るのは難しいです。
  5. 技術的な制約
    特にオンラインアンケートでは、インターネットアクセスが必要であり、デジタルデバイド(技術格差)により特定の層が排除される可能性があります。


■アンケートの活用段階と活用事例


③アンケート調査企画の設計
■アンケート企画の全体像

1.調査目的

■調査目的設定の流れ


2.調査対象者・地域の決定
調査対象者は調査目的・属性条件に応じて決定する必要がある
製品開発目的:新製品の開発ですでにターゲット層が明確に決まっている場合は、製品ターゲット層を調査対象者とする。
市場機会調査:市場規模や、機会を把握する場合は、明確な市場を絞らず幅広い調査対象者とする。
主な属性条件(外観的、内観的属性)の種類
a.構成単位:個人や企業、団体、世帯など
b.必要条件:性別、年齢、家族構成、職業、サービスの利用実績など
c.地域条件:都道府県や商圏など

3.標本サイズの決定
サンプルサイズ決定の流れは、下記の順番で進められる
a.重要な調査の決定:仮説の検証に必要な重要な調査テーマを決定する
b.重要な質問数値の決定:仮説の検証に必要な質問の明細を決める(10歳刻み、男女別など)
c.回答率の予想:過去の調査実績などをもとに、回答率を予想する(20%は、「はい」を答えるなど)
d.誤差の計算:誤差早見表を確認し、誤差の数値を確認する
e.サンプル数の決定(予算考慮):許容できる誤差を決定し、予算を考慮の上、サンプル数を最終決定する
■標本誤差


4.抽出方法の決定
標本抽出の流れは、下記の順番で進められる
a.母集団を規定する:昨年1年間にお茶のAブランドを買った男女個人(18歳~49歳)
b.信頼できる名簿がない:仮説の検証に必要な質問の明細を決める(10歳刻み、男女別など)
c.地点をランダムに抽出する:本調査の設計に従って、サンプリングを行う
d.昨年のお茶の購入ブランド調査:「昨年にお茶を購入したことがあるか」「購入したブランドにAは入っているか」など、簡単な質問調査を行う
e.母集団が出来る:上記の調査を実施して該当した者を母集団名簿として利用する
f.調査対象を抽出:本調査を実施する

5.調査手法の決定
調査手法ごとにメリット及びデメリットがあるため、予算の期間を考慮して調査手法を決定する


6.調査日程
調査は、下記工程で進めることができる
a.調査設計・標本の抽出:上述のとおり
b.調査資材・調査票の準備:調査手法ごとで調査資材がことなるので、調査手法別に資材を準備する。
・すべての調査手法において、調査対象者一覧表を準備する
・面接調査など物理的に行う調査では、紙の調査票(標本数+予備)を準備する
・個人情報保護法に基づき調査対象者への告知状など
c.調査員の手配:面接調査の場合は、調査員一人当たりの担当は20~30標本程度が妥当と考えられている。その他の、調査手法においても妥当な人数を目安に、調査に必
要な調査員を算出し、調査員を手配する必要がある
d.調査員への説明:調査員の質は、調査の品質を大きく影響する。そのため、調査が適切な方法で行われるように、調査員に事前に手順やスケジュールを周知する必要がある。その際に、調査員への手順を作成したり、または調査のロールプレイングを行うことが有効な手段である。
e.初票点検・調査票の回収:初票点検とは、面接調査などで調査員が初めに実施した調査票を管理者が点検することを言う。管理者は、調査員の誤った理解や認識不足を指摘し、そのあとの調査が正しく行われるように指導する。調査票の回収では、後藤や回答漏れが発見された際は、調査員に再調査をい
らいする
f.インスペクション:インスペクションとは、調査品質を保持するために、調査が正しく行われたか、不正がないか点検する作業です。調査員の属性に応じて点検をします。
「アルバイト調査員」(75%超モニタリング):5%について点検を実施
「アルバイト調査員」(モニタリングなし):10%について点検を実施
「常用、登録調査員」:熟練度に応じて点検を実施
g.データ集計:下記へと続く

7.データの処理方法分析・成果物
データの処理などについては、下記工程で進めることができる
a.集計計画:仮説検証的アプローチの調査の集計計画では、仮説が検証できるように集計計画を立てるのが基本である。ある回答での性別、年齢が異なるとした仮説
検証では、「回答×性別×年齢」としたかたちで集計を行う。調査票完成とともに、集計計画は立案可能であることから、集計計画は調査実施中に立案もできる。
b.エディティング:調査票の点検は、調査実施中の最終段階と、集計中の序盤の2段階で実施する。調査実施中の点検は、データの誤りや記載漏れなどを発見する目的であり、集計段階での点検は、データ入力のための、読みにくい文章のずれや不明瞭な回答の確認である。追加確認が発生すれば、再調査も実施する
c.コーディング:意見や態度などの自由回答の集計処理については、フラグ付けが必要になるその集計方法には2種類存在する。
・分析のために層別基準に用いる項目を書き抜く。そのまま書き抜く、・回答を要素別に書き抜き、カテゴリー化を行う
d.データ入力・データチェック:コンピューターなどの利用し、異常値などをチェックする
・回答個数のチェック、・カテゴリーチェック、・スクリーニング調査の非該当者の回答チェック、・回答の論理・整合性チェック、・異常値チェック
e.単純集計・クロス集計:単純集計は、質問ごとにそれぞれのカテゴリーに回答した頻度を確認し、各質問の全体的傾向を把握する。クロス集計は、仮説検証において差異の要因となる項目を項目別に採用して、他の質問項目を層に分割して集計し、送別の傾向を検討する。


④調査票の設計
1.基本的な質問順
設問の大きな流れについては、「導入→テーマに関する質問→テーマ周辺に関する質問→対象者情報」で作成を進める
導入::挨拶、簡単な質問など
テーマに関する質問:実態の有無→その関連質問、過去→未来など
テーマ周辺に関する質問:職業→業界全体、所属→地域全体など
対象者情報:属性情報、個人情報承諾など

設問なの詳細の流れについては、下記を注意して作成する
a.論理的な順序で
・ヒントなしの質問→ヒントありの質問、・知名の有無→利用の有無→評価→今後の利用意向、・所有の有無→所有台数→いつ購入したか
b.時間の流れを踏まえて
・過去の状態→現在の状態→将来の予想(又はその反対)
c.簡単で答えやすい順番で
・事実確認の質問のあとで意識を聞く質問、・身近なところから先に聞く
d.重要なテーマを先に
・回答を求める対象となるかどうかを確認する質問を先にする、・質問数が多い場合、優先的に聞きたい質問を前のほうにする
e.全体的な質問と具体的な質問
・質問順による回答者への心理的影響の有無、・質問の流れのわかりやすさ
f.総合的な評価と具体的な評価
・評価が好き嫌いなどの感情にかかわる場合は総合評価を先にする、・良い悪いなどの客観的評価にかかわる場合は総合評価を後にする


2.調査項目の構造化

■構造化の工程


3.質問文の書き方
質問文の書き方では下記の事項を注意する
a.質問文は簡潔に
 質問回答者が読み飛ばしや、イライラをしないように、簡潔に記載します。
b.多様に解釈できる言葉を使用しない
・おさけ→日本酒か、ワインか、アルコール飲料全般かなど人によって解釈がことなる
・ごはん→食事の意味か、白米のことかなど人によって解釈がことなる
・介抱される方→「される」は丁寧語の場合も、受動の場合もある
・年収→手取りか、額面か、個人か、世帯かなど
c.質問の範囲・条件を限定する
 質問範囲を明確にしないと、対象者の解釈によって回答を異なる尺度で行うことになる(いつ、だれが、何を、どこで)
d.誘導的な質問をしない
 質問の前に、事前にブランド名等を認識させるなどをして質問を行わない
e.一つの質問で、複数の事を聞かない
 「有効的で効率的」「美容と健康に良い」「楽しいし面白い」などの複数の言葉を一つの質問には入れず、複数の質問に分ける
f.質問相手を明確にする
 留置調査などの場合は、誰の事を回答してもらうかを明確にしておかないと、不必要な回答を入手することになる


4.回答形式

■回答形式の種類

5.設問設計の注意点
 マーケティングリサーチ協会が公表しているインターネット調査品質ガイドラインのの基本方針は下記の通りである

a.課題に対応した質問項目で意味のあるアンケートに
 調査票はマーケティング課題を解決するためにあるため、調査項目の回答で課題が解決されないと全く意味がない。したがって、調査票作成時は、マーケティング課題、リサーチ課題との整合性を常に確認しつつ作成を行う。
b.適切な質問文で有効な回答の入手
 質問項目が適切であっても、あいまいなで適切ではない質問が行われれば、必要な回答を入手することが出来ない。したがって、簡潔でわかりやすい文章で調査票の作成を行う。
c.調査対象者への配慮で回答率アップ
 アンケートの回答率を上げるためには、調査対象者のアンケート中の離脱をふ防ぐ必要があるため、下記事項を考慮する必要があります。


6.インターネット調査品質ガイドライン
マーケティングリサーチ協会が公表しているインターネット調査品質ガイドラインのの基本方針は下記の通りである

a.調査者を大切にする
・調査協力者あってのインターネット調査であることを理解する、・ 調査協力者のプライバシーに十分配慮する、・ 調査協力者との信頼関係を構築する
b.時代にあったインターネット調査の実施
・ マルチデバイスで回答できるようにする、・ デジタルライフの変化に適応した調査を行う
c.調査協力者の回答負荷を意識した調査票設計
・ 回答所要時間は10分以内を推奨する、・スクリーニング調査では抽出に使わない質問を控える、・マトリクス形式や自由回答を多用しない
d.複数デバイスでの回答できる調査票設計
・質問文は短く、そしてわかりやすく、・選択肢は増やしすぎない、・巨大マトリクスはつくらない、・まずは自分で回答してみる

⑤まとめ
昨今の変化する社会の中で、継続してビジネスを行っていくにはマーケティングが最重要と言っても過言ではなく、またそのマーケティングを支えるアンケート調査についても、とても重要と考えている。これをご覧頂いた方々に、少しでもアンケート調査を理解して実施して頂くことで、皆様の継続的なビジネスの手助けになればと思います。