マーケティングリサーチとその進め方

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マーケティングリサーチ

①はじめに
 直近でのコロナ影響をはじめとした社会環境や市場の大きな変化により、消費者の行動や価値観は大きく変化している。ビジネスを継続する上で、今までの販売手法や営業手法では消費者を獲得することが難しくなっているため、マーケティング活動が欠かせないものとなっている。
マーケティング活動が有効に機能するためには、正確なマーケティング情報が収集されることが最重要事項の一つと言える。その重要な正確なマーケティング情報を集める手法が「マーケティング・リサーチ」である。
 今回の投稿では、「マーケティング・リサーチとは何か」と「その進め方」についてお話していきたいと思う。

②マーケティングとは
 「売上目標を達成したい」「見込み顧客の特定と獲得を行いたい」「同業他社との差別化を図りたい」等、これらの営業課題を解決するために、マーケティングは有効な手段となる。そもそもマーケティングとは、どういうものだろうか。
以下、代表的なマーケティングの定義を記載する。

提唱者 マーケティング定義
コトラー:ニーズに応えて利益を上げること。個人や集団が、製品及び価値の想像と交換を通じて、そのニーズやウォンツを満たす社会的・管理的プロセスである。

ドラッガー:マーケティングの理想は販売を不要にすることである。マーケティングが目指すものは、顧客を理解し、顧客に製品とサービスを合わせ、自ら売れるようにすることである。

マーケティング協会:顧客や社会と共に価値を創造し、その価値を広く浸透させることによって、ステークホルダーとの関係性を醸成し、より豊かで持続可能な社会を実現するための構想でありプロセスである。
注 1)主体は企業のみならず、個人や非営利組織等がなり得る。
注 2)関係性の醸成には、新たな価値創造のプロセスも含まれている。
注 3) 構想にはイニシアティブがイメージされており、戦略・仕組み・活動を含んでいる。

 要するにマーケティングとは、「顧客を理解し、製品とサービスを合わせて顧客との関係性を構築して、商品が売れるプロセスを構築すること」と言うことが出来る。そして、マーケティング活動が有効に機能するためには、マーケティングの各プロセスにおいて様々な正確な情報を収集し、適切に分析を行い、それに対応した改善策を立案できることが重要となる。

③マーケティング・リサーチとは
 マーケティング活動における「様々な情報の収集」と「適切な分析」を際に必要なのが、マーケティング・リサーチとなります。
マーケティング・リサーチとは、どういうものだろうか。マーケティングと同様に以下に、代表的なマーケティング・リサーチの定義を記載する。

提唱者 マーケティング・リサーチの定義
コトラー:マーケティング・リサーチとは、企業が直面する特定の市場状況に関するデータと調査結果の体系的なデザイン、収集、分析、報告であると考える。マーケティング・リサーチは、効果的なマーケティング意思決定の第一歩であり、基盤であることを忘れないでほしい。

日本マーケティング・リサーチ協会:企業などの組織が、商品・サービスを提供するために、お客様を知り、お客様にあった商品・サービスをつくることで、様々な経営資源を効率的に運用するために顧客を知る活動がマーケティング・リサーチです

日本能率協会マネジメントセンター: マーケティング活動の企画、遂行、検証の各場面で発生する課題に関して何らかの手段データを収集し、分析し、その課題の実態や構造を明らかにする手段

 要するにマーケティング・リサーチとは、「企業が直面するマーケティング課題と、それに対して経営資源を効率的に運用するために必要な調査(体系的なデザイン、収集、分析、報告、顧客を知る)活動」と言うことができる。

④マーケティングリサーチの手法
 マーケティングリサーチにおいて知ることが出来る代表的な情報は、3つある。

 1つ目は、市場の事実である。「市場の大きさはどの程度か」「市場における自社商品のシェアと、競合とのポジションはどうか」「どんな消費者が、自社商品を買ったりしているのか」を知ることができる。  
そして、マーケティング戦略を議論するための土台を作ることができる。

 2つ目は、消費者の考えである。「消費者は自社商品が好きか嫌いか、イメージはどうか」「購入意向はどうか」「消費者がどういった点において、自社の商品を好きなのか、又は嫌いなのか」を知ることができる。
そして、マーケティング戦略を立案するための軸を作ることができる。

 3つ目は、消費者の反応である。「消費者がどのように反応してくれるか」「実際に消費者が使ってみて、わかったこと」 
そして、マーケティング戦略実行した時の成功度合いを検証できる

 マーケティングリサーチは、上記の情報を入手する手段として「定量調査」「定性調査」の2種類に分けれれる。定量調査と定性調査の内容は下記の通りである。調査目的に応じたリサーチ手法を選択する必要がある。

⑤マーケティングリサーチの進め方(調査企画)
現在のマーケティング業界のリサーチ手法で大半を占める、代表的なリサーチ手法である「Webマーケティング・リサーチ」の進め方について説明する。
「Webマーケティング・リサーチ」の進め方は、「1.マーケティングテーマ・課題の発見」「2.リサーチ課題化」「3.仮説構築」「4.企画書作成」「5.調査票作成」「6.実査」「7.エンディング・集計」「8.分析・報告書」となる。
※「6.実査」「8.分析・報告書」についてはそれぞれ、企画書通りの運営と、集計表の読み取りだけとなるため、ここでの記載は割愛する。
マーケティング成功の8割の部分を占めるのは、1~4までであるため、重点的に時間をかける必要がある。

1.マーケティングテーマ・課題の発見
調査企画書の作成する前に、「①背景の整理」「②マーケティング目標」「③リサーチ目的」を整理しておかなければならない。 
「①背景の整理」では、生活者や、業界全体、競合の動向及び企業がこれまで行ってきて明らかになった事項や、現在マーケティングプロセスのどの段階にいるか等を踏まえて、今の企業では何が課題でどんなことに悩みがあるのかを整理しておく必要がある。
「②マーケティングの目標」では、背景の整理で見えてきた課題を解決するためのマーケティング目標を設定し、何をするための調査(営業部門の販売戦略を強化するため等)なのかを具体的な調査結果の活用イメージを設定する。
「③リサーチ目的」では、この調査で明らかにする課題はなにか、又は結論を出すべきことは何かを設定する。商品開発の段階で、いろいろな角度のアイデアを入手して、アイデアの方向性を決定するか、商品の製作プロセスに移るかの調査目的

2.リサーチ課題化
マーケティングテーマ・課題の発見で設定した明らかにしたい課題、結論を出すべきことについて、具体的に何を調査すれば良いか、判断のために必要な指標は何かを整理する。

3.仮説構築
マーケティングテーマ・課題の発見を基にした仮説を複数立て比較検討し、より精度の高いマーケティング課題・リサーチ課題を設定する。

4.企画書作成
 「誰に聞くのかを決める」「仮説構築」「どんなふうに風に聞いて」「どうするか」「いつ、いくらで」を漏れなく整理して、設計する必要がある。
下記に項目を記載しているので参考にしてほしい。

5.調査票作成
 調査票は、「導入部」「テーマ部」「展開部」「終了部」を構成要素として作成する。
 「導入部」では、タイトル、趣旨説明、実施期間、責任者名を記載します。これがないと回答者との信頼関係が得られず、回収率の低下につながります。
 「テーマ部」では、課題解決のためのテーマを可能な限り絞り込み、仮説を直接検証できる質問をします。この時、テーマが多数存在すると、内容の薄い結果しか得られなくなるため、可能な限りテーマは絞り込む必要があります。
 「展開部」では、テーマに関連する周辺情報の質問をします。テーマを市場全体で捉えたりなど、より具体的にその位置づけを把握するために必要となります。
 「終了部」では、個人の性別や年齢と言った個人情報を質問します。これは、マーケティング戦略でのセグメンテーションやターゲティングでとても重要な情報になるため、最終的な結果分析で必要な個人の属性情報を漏れなく質問します。
  そして、調査票を作成する際は、3つのポイントに気を付けて作成を行う必要があります。
 1つ目は、課題に対応した質問を行うことです。調査票はマーケティング課題を解決するためにあるため、調査項目の回答で課題が解決されないと全く意味がありません。「マーケティング課題との整合性を確認」「リサーチ課題との整合性を確認
」「データ収集後のアウトプットとイメージの具体化」などを行い、調査票の作成を行います。

 2つ目は、適切な質問文を作成することです。質問項目が適切であっても、あいまいなで適切ではない質問が行われれば、必要な回答を入手することが出来ません。「あいまいな表現は利用しない」「前置き文や丁寧語は出来る限り省略」など簡潔でわかりやすい文章で調査票の作成を行います。

 3つ目は、調査対象者に配慮を行うことです。アンケートの回答率を上げるためには、調査対象者のアンケート中の離脱をふ防ぐ必要があるため、「回答所要時間は、10分以内とする」「巨大マトリックスを使用しない」「マトリックスや自由回答を多用しない」「スクリーニング調査では抽出に使わない質問を控える」などを行います。

7.エンディング・集計
調査票の記入漏れやご記入のチェックをし集計データのクリーニングを行って、単純集計とクロス集計表を作成します。
単純集計表は、全体傾向を俯瞰して分析・把握する際に利用します。クロス集計表は、セグメント別に詳細を把握する際などに利用します。
分析では全体と詳細の両面からの分析が有効なため、集計表は2つ作成することを進めます。

⑥まとめ
ここまで、マーケティング・リサーチとその進め方について記載してきた。昨今の変化する社会の中で、継続してビジネスを行っていくにはマーケティングが最重要と言っても過言ではなく、またそのマーケティングを支えるマーケティング・リサーチについてもとても重要と考えている。これを見て頂いた方々の少しでも、マーケティング及びマーケティング・リサーチを理解して実施し、継続的なビジネスの手助けになればと思います。